未知の世界5

『でも、どうしてだろう…。』









「な、なにが?」







『彼女は施設に戻りたがるんですよね。







早く退院したいって。』







「え?あ…いや。過去のことを思い出させてはいけないと思うけど、かなちゃんもよく病院を抜け出したよね?施設に戻ってたことも…。」








気まづそうに早川先生が言う。







『私は毎日生きてくことに必至でしたので…、あそこから逃げ出そうという気持ちより、病院にいつまでもいてはいけないというか。もちろん施設は嫌でしたけど、毎日学校行って…っていうふつうの生活に戻らないといけないと思っていて。』








「その気持ちをあの時聞けてれば、俺もあんなに悩んでないぞ…。」







ボソッと幸治さんが呟く。








『す、すいません。
この中で、幸治さんが一番怖かったから、特に病院を抜け出したいと思っていたので、あの時はそんなことを言うことなんて…って、あ、いやっ!今のはなしで!!!』








私の焦った顔に進藤先生と早川先生が笑う。








幸治さんは、あの時と変わらない怖い顔。







う……。つい口が滑った…。







「まぁ、今は幸せなんだからいいんじゃないのっ?」









と進藤先生が助け舟を出してくれた。








『はい、もう過去のことなんて、全く気にもしてません!』







なんて、今朝あんなに怖い夢を見たのに…。








そう思うと、再び箸は進まなかった。
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