恋愛上手な   彼の誤算
インスタントではあるが淹れ立てのコーヒーを持ってデスクに戻った。先ほど騒いでいた二人も通常業務に戻っているらしくそこはいつもと変わらない光景だった。自分の席に座ってキーボードに手を乗せた途端はたと気付く。

そういえばさっき助けてもらったのにろくにお礼も言っていない。

ココアの件でなんとなく話が流れてしまったけど、確かに相沢さんは困っていた私を助けてくれたのだ。

「またやってしまった……」

自分の不甲斐なさに項垂れる。見た目だけで勝手にチャラそうだから苦手だのと決めつけた上に親切にされてお礼も言えないだなんて人としてどうかしている。
机上に置かれた領収書に目が止まって思わず溜息が漏れた。

次に会ったらちゃんとお礼を言おう。

そう心に決め、深呼吸してから月末に向けて増えつつある業務に取りかかった。



< 8 / 17 >

この作品をシェア

pagetop