プラス1℃の恋人
 あらためて児嶋からデートの誘いがきたのは、それから一週間後のことだった。

『今夜空いてますか? キャンセルが出たみたいで、レストランの予約がとれました。窓際の席は、あとは2カ月先まで無理だそうです』

 会社用の個人メールではなく、スマートフォンにメッセージが届いた。

 べつに窓際じゃなくてもいいんだけどね。
 でもたぶん、頑張って予約をとってくれたのだろう。

 そういうところがかわいく思えて、青羽はすぐに返事を打った。

『エアコンが省電力モードになる前に、頑張って仕事を終わらせるね』

 オフィスの端の席から、「ひゃっほう!」という児嶋の声が聞こえた。



 定時になり、エアコンの音が小さくなった。
 予定どおり仕事を終わらせ、青羽も帰り支度をはじめる。
 でも児嶋は、まだ外回りから帰ってきていなかった。

 ホワイトボードには、『打ち合わせ 横浜』と書かれている。
 そういえば、午後から二階堂に連れられて出かけていったっけ。

 事務の桃子が「大きな商談があるみたい」と言っていたけれど、横浜ならそれほど遠くはないし、約束の時間には帰ってくるだろう。
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