プラス1℃の恋人
――なんだこれは。若者のあいだで流行っているスラングか?
〝誤字〟とひとくくりにできないようなスペルミス。
文法がまったくなっていない文章。
ところどころ、おかしな記号まで挿入されている。
別の誰かの原稿だろうか。
表紙を確認してみるが、ちゃんと『須田』とサインがしてある。
――これは参ったぞ……。
千坂はデスクの上に転がっている赤のボールペンを持ち、ゲンナリしながら部下が書いた原稿のチェックをはじめた。
ひととおり目を通し、書類を返すために須田青羽の席に向かう。
須田の席は、西側の端だ。
どこかのビルから反射された光が、スポットライトのように須田の背中を照らしている。
「おまえなあ、なんだこれは。まったく意味が通じないぞ」
デスクの上に原稿を置くと、顔を真っ赤にした須田が、うつろな目で千坂を見上げた。
――おいおい、大丈夫か?
具合でも悪いのだろうか。
女性というのは特有の体調リズムがあるらしいし。
それならそれで融通をきかせるのだが、へたにこっちから尋ねるとセクハラ扱いされかねないので、上司としては難しいところだ。
――ま、限界なら自分から言ってくるか。
「今日中に全部直しておけ。ついでに追加のぶんも頼むな」
千坂は軽い気持ちで指示を出し、自分の仕事を片付けることにした。
〝誤字〟とひとくくりにできないようなスペルミス。
文法がまったくなっていない文章。
ところどころ、おかしな記号まで挿入されている。
別の誰かの原稿だろうか。
表紙を確認してみるが、ちゃんと『須田』とサインがしてある。
――これは参ったぞ……。
千坂はデスクの上に転がっている赤のボールペンを持ち、ゲンナリしながら部下が書いた原稿のチェックをはじめた。
ひととおり目を通し、書類を返すために須田青羽の席に向かう。
須田の席は、西側の端だ。
どこかのビルから反射された光が、スポットライトのように須田の背中を照らしている。
「おまえなあ、なんだこれは。まったく意味が通じないぞ」
デスクの上に原稿を置くと、顔を真っ赤にした須田が、うつろな目で千坂を見上げた。
――おいおい、大丈夫か?
具合でも悪いのだろうか。
女性というのは特有の体調リズムがあるらしいし。
それならそれで融通をきかせるのだが、へたにこっちから尋ねるとセクハラ扱いされかねないので、上司としては難しいところだ。
――ま、限界なら自分から言ってくるか。
「今日中に全部直しておけ。ついでに追加のぶんも頼むな」
千坂は軽い気持ちで指示を出し、自分の仕事を片付けることにした。