強制両想い彼氏
「皐月くん今日放課後ひま!?」
「ん?なんで?」
「あのっ、ひまなら一緒にカラオケ行かないかなーって……」
私の誘いを聞いた皐月くんは、目を丸くする。そしてすぐに嬉しそうに屈託ない笑顔を浮かべた。
「いいな!行きたい!」
「ほんとに!?良かったあ!あのね!まだ人数は確定してないんだけど、うちのクラスから6人と、他のクラスの人も何人か来るんだって!永瀬くんが誘ってくれたんだけど、皐月くんも誘っていい?ってきいたらいいよって言ってくれてそれで……」
そう言った瞬間、皐月くんの顔から笑顔が消えた。
皐月くんは俯くと、小さな声で呟く。
「……ごめん、やっぱり行けない」
「え?」
顔を上げた皐月くんは、眉を下げて申し訳なさそうに小さな笑みを浮かべていた。
「思い出したんだけど、今日の放課後はちょっとサッカー部のミーティングがあってさ」
「あ……そうなんだ……」
「うん。だからお前だけ行ってこいよ」
皐月くんがそう言って優しく笑ってくれたから、私はこくんと頷いた。
その時、ちょうどタイミング良く昼休みの終わりを告げる鐘が鳴り響き、私は慌てて皐月くんに向き直る。
「じゃ、じゃあまた別の日に一緒にカラオケ行こうね!ミーティング頑張って!」
そう伝えてから、私は急いで自分の教室へ戻った。
その小さくなっていく私の後ろ姿を、皐月くんが恐ろしい瞳でじっと見つめていたことなんて、その時の私は全く気付かなかった。