強引年下ピアニストと恋するカクテル。


王子様みたいな颯太くんの飛躍ぶりにちらりと視線を向ける。
彼が弁護士だったって言うのにも衝撃を隠せなかったのに。
あんなぽやっとしてるくせに、いざって時は頼りになるのかもしれない。

色んな人に囲まれて挨拶をしつつも、颯太くんもピアノの音色に夢中だった。
なのに……演奏が終わった瞬間アンコールの拍手が響く中、不機嫌な彼は一礼すると会場を出て行こうとする。

「怜也、待ってー。ちゃんと皆に紹介したいからこっちに来て挨拶してよ」
笑顔で手をブンブンする颯太くんに対し、天使のように美しい怜也は鼻で笑う。
「俺を知らない奴なんて、居るわけないでしょ? もう目的は叶ったし帰る」
「怜也!」
ざわっと会場がまた騒然とする。女性客の何人かは彼を追って外へ出て行こうとしている。
(お祝いのパーティーなのになにあの態度。 ……本当にあの天使みたいな彼の唇から発せられたの?)
苦笑する颯太くんは優しすぎる。何もなかったかのように雑談の始め、BGMが流れ出す。

私は、たった今、夢の様な甘い演奏の余韻に浸る間もなく現実に戻されて呆然としていた。

目的は果たせたって、お祝いに一曲弾いてあげた、みたいな?

何が起きたのか分からず、お姉ちゃんのいる席にいけなくて立ちつくす。

「みいちゃん、悪いけどその花、あいつに渡してきてもらってもいい?」


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