強引年下ピアニストと恋するカクテル。
今にも殺されそうなほど睨まれて腰が抜けそうだ。
「わ、私帰りますね。でも一応、今日は颯太くんのBARのお祝いですよね! せっかく綺麗な音色もあなたのその態度で台無しになりますので」
ピアノを教えている身で生意気にも言わせてもらうと、私との技術の差は明確。表現力だってなにもかもこの人の方が上だ。
(でもあんなに不機嫌に弾くなら弾いてほしくない)
「颯太のためにここに乗り込んできたってことか」
「別に颯太くんのためじゃないです」
不機嫌だった彼は、なんだか投げやりな笑いを顔に浮かべて椅子に座った。
「……でもあんたは颯太と他人じゃねえ。全く颯太の為じゃないってわけでもないだろ」
「……」
確かに、颯太くんやお姉ちゃんの今後の結婚までは、頑張っている二人の邪魔はしたくないとは思っている。
「――蒼村怜也。俺の名前を聞いて、知らない奴なんてきっとここには居ないんだろうがそんなの馬鹿みたいだ。全然満たされねえよ」