強引年下ピアニストと恋するカクテル。


きっとショックのせいで、荒れてそんな態度を取ってしまっている。
分かるよ。私の友達でも失恋したあと、落ち込むか荒れる子ばかりだったから。

でもつまり。
怜也くんは、うちの姉が好きだったってこと、だよね。

颯太くんじゃ、奪えないって分かって苛立ってる。

きっとそうなんだ。
身うちの私だけでも、彼に謝らないと。

「ごめんなさい」
「なんで謝るんだよ」
「颯太くんに嫉妬してるのかなって」

「ば、ばっかじゃねえの! 知らねえよ馬鹿野郎!」

焦った彼が立ちあがると、ふっと濁った眼で笑う。
天使じゃない。きっと何か陰で悪いことをしていて堕天使になってしまったに違いない彼だ。

「俺が傷ついてるって気付いただけでも褒めてやろう」
「こ、光栄でございます」

「いいよ。あんたからキスしてくれたなら、颯太の前で良い子ちゃんになってやるよ」
「わあ、キスしたら良いの――って」

キス?

なぜ私?

ああ、もしかして姉は憧れ過ぎてキスなんて出来るわけじゃない、仕方ないから妹の私で妥協してやろう、みたいな?

「む、無理です」
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