強引年下ピアニストと恋するカクテル。
「うそ」
「まああの容姿では、俺の話は説得力無いよ。でもみいちゃんはもう見ちゃったでしょ」
「う、うん」
驚いた。私の妄想では甘いお菓子の香りに身を包み、頬を染めて天使みたいに綺麗に笑ってくれるんだろうなって思ったから。
『え、僕のファンなの? わあ、嬉しいなあ』
『覚えてるよ。一言だって喋ったら、僕は人の顔忘れないよ』
これぐらいの甘い台詞を、ポンポン喋ってくれると思ったのに。
「気晴らしに何か演奏する? グランドピアノ使っていいよ」
「え、そんな、私みたいな指導職員止まりの人間の演奏なんて、こんな高級なBARには似合わないって言うか」
「そんなことないと思うけどなあ」
しょぼんとした颯太くんと共に、私も項垂れつつBARへ戻る。
そして私たちに気付いたお姉ちゃんが、こっちに手を振るのに気づいた。
「みい、颯太くーん、怜也くんが待ってるぞー」
BARカウンターに、上品で可愛らしいローズピンク色のワンピースに身を包んだ姉と、天使みたいな可愛らしい笑顔を浮かべた怜也がカクテルを飲んでいた。
お姉ちゃんのカクテルは、服に合わせたピンク色の炭酸系のカクテル。
お酒なんて飲めなさそうな天使、怜也は自分の瞳と同じ紺碧色のカクテルを持っている。
「すごい偶然だよねー。みいの憧れのピアニストが颯太の幼馴染だなんて」