強引年下ピアニストと恋するカクテル。
「……お姉ちゃん、酔ってない?」
頬がカクテルと同じ色に染まっている。
いくらおっとりした姉だと言え、颯太くん以外の男性と至近距離でカクテルを飲みながら会話しているなんていつもでは信じられない。
怜也が小悪魔なのか、お姉ちゃんが鈍感なのか、二人の距離に私はひやひやだ。
「酔ってないよー。ねえ、幼馴染さん」
「うーん。俺が来た時には二杯目だったのかな? だとしたらお酒弱いんでしょ。もう辞めときなよ」
……この差。
私には散々脅しをかけたくせに、好きな人である姉にはこの態度。
ああ。ピアノを演奏している時以外の彼を嫌いになってしまいそうなほど、清々しい差を見せつけてくれる。
「それに偶然じゃないよ」
怜也が、自分の持っているグラスを揺らす。
怜也のカクテルも炭酸系だったのだろう。
しゅわっと泡が一面に広がり、表面にぷかぷかと顔を出した。
「颯太が美雪さん狙いであのピアノ教室に入ったんだ。ついでに俺も巻き込まれてね。だから俺は偶然じゃないよ」
あんな頃から颯太くんはお姉ちゃんが好きだったんだ。
その事実に驚いて横の颯太くんを見ると、バツが悪そうにバーテンダーと話しだした。