強引同期に愛されまして。

郵便受けより内部にガラス扉があって、どうやらここは中から出るか、インターホンで中にいる人にロック解除してもらうか、自らが鍵を持っていないと開かないらしい。


「……ずいぶんすごいところに住んでいるのね」


確実に月の家賃は十万超えるであろう作りに、思わず眉をひそめてしまう。

うちの給料で、こんなところに住めるかな。まあ住めないことはないけれど、将来の貯蓄とかは考えていなさそうだ。格好いいからとかいう理由で選びそうなタイプだよ田中くんは。ああ本当に考えなしというか、今度何かのタイミングで生活は苦しくないのか聞いてみよう。

オカン的思考が出てきたところで、頭を振ってアパートから出た。

郵便受けの隣に、管理人さんへのインターホンがついていたし、【グランズマンションT】と書いてあったから、あそこは賃貸マンションなのかな。どっちにしろ、ずいぶん贅沢なところに住んでることに変わりはないな。

とりあえずスマホのナビ機能を使って、自分のアパートに帰り着いた時は、十六時だった。
帰りに買い物をしてきたので、もう少し落ち着いたら夕飯を作ろう。まずは部屋着に着替えてくつろぎたい。

しわくちゃになった結婚式用のおしゃれなワンピーススーツをクリーニングに出すために袋に入れたのち、お湯を沸かし、コーヒーを淹れて一息つく。
冷めていたけれど、彼の家で飲んだコーヒーのほうが美味しかったので、安い豆を買ってしまった自分を呪った。
一度おいしいものに手を出してしまうと、安物が食べられなくなるから困る。

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