強引同期に愛されまして。
「これでいいか」
どこかに旅行に出かけたときにお土産として買った変なゆるキャラのキーホルダーを見つけたので、彼のくれた合鍵につける。
くすぐったいような不思議な気分に、どんな表情をしたらいいか自分でわからなくなる。
付き合うってどういうことだったっけ、なんて枯れたことを思ってしまった。
私と田中くんは今まで同僚としての付き合いしかない。しかも、どちらかと言えばオカン女子が手のかかる子供の面倒を見る、というようなやり取りばかりしてきた。
これをカレカノの距離感にシフトチェンジするというのは、なかなかに難しい。
普通なら電話したりメールしたりするんだよね。
【帰ったよー】とかハート飛ばしながら書けばいいのかしら。
でもなぁ……そんな柄にもないこともしたくないし。
そういえばあいつ、なんか変なこと言ってなかったかな。同棲するとかなんとか。
どうしていきなりそこまで話が進むのか本当にわからない男だ。
会社に行ったらどういう態度とればいいのかなぁ。
それにしても田中くんって結構いい体つきだったなぁ。
ハタと、脳内お花畑みたいなことばかり思いつき始めたので、私は考えるのをやめて夕飯を作り始めた。
なんとなくずっと携帯電話を気にしていたのだけど、食べて寝るまでにも、田中くんからは電話もメールもこない。
私たち、本当に付き合い始めたのかな。
疑問しかわかないことがなんだか切ない。