強引同期に愛されまして。


「おーい、三浦」


別部署の同僚と外で昼食を食べて戻る途中、後ろから走ってきた田中に背中をたたかれて、図らずもドキッとしてしまった。
一緒に昼食を食べていた横須賀(よこすが)さんは、“田中=厄介ごと”と思っている節があり、「あ、私先に行くね」とさっさといなくなってしまった。


「ああ、悪い。横須賀さん、行っちゃったな」

「別に。お互い忙しいから気にしないで」


そういう田中くんは一人だ。出先からの戻りなのだろう。


「三浦、午後からちょっと時間とれる?」

「何?」

「ほら、学校に導入するって言ってたやつ。ちょっと揉めてて」

「なんでよ」

「ほかの学校でのトラブルとか聞いてるみたいで、急に尻込みされたんだよな。学校同士のネットワークがあるんだろうけど、すでに導入済みのところで接続トラブルで仕事にならないとか言われたらしくて、契約そのものを見直したいって言ってる」

「それは、……まずいね」


今、学校教育現場はICT技術を使っての学習環境を整えることに躍起になっている。ICTというのは通信技術を使ってコミュニケーションをとる、ということ。

どんなに言葉を尽くして説明しても、一見に適わないことはよくある。それくらい視覚というのは、短時間で多くの情報を与えてくれるものなのだ。
タブレットを使ってデジタル教材を配布できたり、教師個人が持っている資料をすぐに共有できたりとデジタル化におけるメリットは大きい。

多少プログラムの作りこみは必要だけれど、アンケートシステムを利用して生徒からの意見の瞬時に集計することも可能だ。そのほか、校務の効率を上げることもできるため、導入を検討している学校は多い。

公立高校がその動きを見せ始めたことで、私立の学校も軒並み右ならえの状態だ。

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