強引同期に愛されまして。
田中くんがとってきた契約は、私立のマンモス校のICT化の仕事だ。
一応仮契約まで済んでいて、今は話を詰めている段階だ。これが成功すれば、多分田中くんは永屋くんを抜いて営業成績はトップに躍り出るはず。
システム開発部で引き受けているのは、アンケートシステムと、校務のIT化だけだけど、会社全体としてはネットワークの構築からサーバー機の導入、通信環境の整備から、のちのメンテナンスまでと大口の契約だった。
今期の利益の大半がこの仕事で生まれるはずだ。コケさせちゃいけない、絶対。
ただ、これを仕切るにあたり田中くんでは荷が重たそうだなとも確かに思う。
彼はお客と話すのは上手だけれど、ニーズを聞き取るところはいまいちだし、技術面の知識もあやふやなまま話す癖がある。どこまで大風呂敷広げたんだか考えるとちょっと怖い。
「でもそれって私だけと話してもどうにもならないわよ。CEのほうが仕事多いでしょう。技術部巻き込んで話したほうがいいと思う」
「そうだなー。わかった。俺招集かけとく」
「今日は社内にいるから、時間は合わせるわ。一番忙しいのCEでしょ。そっちの時間から調整して」
「了解。じゃあ行ってくる」
ポン、と肩をたたいて、田中くんは走っていく。
うん。仕事の話だと気負えずに話せるよね。って、それはいいんだけど、予想外に普通過ぎる。
会話も今までと変わらないし、恋人らしいことだって朝から今までに一度もないじゃん。
これって本当に付き合ってるって言えるの?