強引同期に愛されまして。


 翌日は私の心を反映したかのような曇り空。
顔を洗って決意も新たにアパートを出たけれど、まるで避けられているかのように田中くんに会わない。出勤してきそうな時間を狙って電車に乗ったけど合わないし、電話もいまだ不通。

 一方、和賀さんは朝から気まずげな視線を投げかけてくるから、声をかけてなだめ、相談にやって来る面子に答えてから営業部に行ったら、もう外出になっていた。

なんなのよ。こういうところがあいつは男らしくない。
逃げるか? 普通。
お陰でこっちもどんどん落ち込んできちゃうじゃない。


そうこうしているうちに午前中が過ぎ、お昼休みに何度か営業部を覗いたけれど、彼の姿はない。
日中に捕まえるのはもう諦めようと、ようやく仕事に本腰を入れた午後、ヘルプデスクの初音から、内線がかかって来た。


『三浦さん、今から時間ありますか? 三十分くらいでいいんですけど』

「いいけど。なにかあった?」

『プログラムの件で相談があるそうなので、申し訳ないんですが、小会議室Bまできてもらえます?』


あるそう……って、なんでそんな他人ごと?


「初音の相談?」

『いいえ。とにかく来てください』


反論する余裕もなく電話を切られ、仕方なく途中のファイルをセーブして立ち上がる。
部長に声をかけ、行き先ボードに書き込み、上の階にある会議室へと向かった。


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