強引同期に愛されまして。

「それと、三浦はたぶんお前のそのしつっこーい片思いはわかってないからな。ちゃんと説明したほうがいいと思うぞ」

「うるせぇ」

「ほら梶さん、行きましょう」という永屋くんの声。私は渾身の力で田中くんを押し、梶くんのほうへと首を動かすだけのスペースを手に入れた。


「梶くん、ごめん。でももう本当に、私の中ではあなたとは終わったの。だから、こういうことも、もうしないで」


それだけしか言えなかったのは、また田中くんに頭と耳を押さえられたからだ。
再び、彼の早い鼓動音だけが私の中を埋め尽くしていく。


「……葉菜、ごめん」


かすかに聞こえたのは、梶くんの声だろう。でも離れようと抵抗するとどんどん力を込められるので、やっぱり身動きはとれなかった。

しばらくして、ようやく放してもらえた時には、梶くんと永屋くんの姿はなくなっていた。



「帰るぞ」

「え?」


田中くんは私の顔を見ないまま、手を引っ張って歩き出した。

エントランスの見物人の中から、ひゅーという冷やかしの声が聞こえたけれど、それが誰のものだったかは分からない。ただ。次に出社したら、散々な噂になっているんだろうな、とか思うとちょっと気は重たいけれど。

でもいいや。もう気にしない。
だって今、私はすごく嬉しいんだから。

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