強引同期に愛されまして。

その言葉に、予想以上にほっとした自分がいた。
結婚なんて実感わかないって思っていたけど、心の底では、将来的に彼といる未来を望んでいたのかもしれない。
おなかのあたりが温かくなってきて、口が緩んでしまう。
ダメダメ調子に乗りすぎちゃ、と敢えて冷たく言ってみた。


「……金持ち発言」

「なんだと?」

「だってそうでしょ。どこの世界に家政婦雇う新婚とかいるのよ」


田中くんは甘い言葉が返ってこなかったことが不満なのか、唇を尖らせる。


「んだよ。お前のこと考えて言ってるんだぞ。納期近いときとかすげー忙しいだろう」

「アンタが代わりに作ればいいんでしょ。ご飯とか」


そう言ったら、すごく困った顔をされた。


「だって……出来ねぇし」

「教えてあげる」

「だったら弁当でもいいだろ」

「だめよ。ふたりのうちはそれでもいいけど、子供を人口調味料付けにする気?」

「はっ?」


慌てて真っ赤になる彼の顔は、すごくかわいい。写真に収めておきたいくらい。
私は思わず声を出して笑ってしまった。

不思議。
あんなに想像もできないと思っていた未来が、今は簡単に想像できる。

好き放題に動く彼を、私が叱って。私たちはたぶん、喧嘩もいっぱいするだろう。
ふたりでいるうちは、いつだって私のほうが立場が上で。

でも子供ができたらきっと、私より彼のほうがきっと過保護になる。
私はきっとやきもちを焼いてそっぽを向くけれど、彼は子供を私ごと抱き締めるだろう。

< 80 / 100 >

この作品をシェア

pagetop