強引同期に愛されまして。
「あははっ、……はあ、おかしい」
それは予想以上に幸せな光景で、私は笑いつつ涙がこぼれてきた。
なんだ。悪くないじゃん。
彼と家庭を作るというミッションは、仕事と同じくらいにやりがいに溢れている。
「葉菜?」
「なんでもない」
「なんでもなくないだろ。なんで泣いてるんだよ」
潤んだ目元を撫でられて、自然に口が緩んでしまう。
想像した未来が、予想以上に幸せそうで泣けてきた、なんて言えないじゃん。
「知らない。アンタが好きだから泣けるのよ、たぶん」
彼はそんな私を呆けたように見つめた後、ここが道端であることも気にせず、ぎゅっと抱き締めた。
「ちょっ」
「あーもう。抱きたい。今すぐ」
「ここでやったら殺すわよ」
「じゃあ早く部屋に行こう」
手を引っ張られて、小走りになりながらエントランスをくぐる。
こっちはパンプスだっていうのに、と思うけれど。楽しそうな彼の横顔は見ているだけで私を幸せにしてくれる。
転がるように部屋に入って、鞄を投げ捨てる。
空けたのはたった一日なのに、部屋が汚れている。床に転がっていたビール缶を蹴ってしまった。
「きゃ」
「あ、悪い」
「一日で汚さないでよ」
「お前が帰ってこないからだろうが」
「私と暮らしたいなら、自分のことは、……ん、自分で」
憎まれ口の間にキスが落とされる。
「出来ねぇよ。俺は、お前がいないと駄目なんだよ」
偉そうに情けないこと言わないでよ、と思うけど、彼の言葉は、私の自尊心をとても満たした。