強引同期に愛されまして。

「何も聞いてない?」

「はあ」

「一応ね。あの子、跡取り息子なの。本人の希望で今の会社に行ったけれど、そのうち飽きてやめると思っていたのよねぇ。意外と長続きしていてびっくりしているのだけど」

「……はあ」


なんか、おっとりしているけど凄いこと言っているなぁ。まるで自分の息子が飽きっぽいことが当然のような口調。田中くんだって社会人なんだからそんな責任感の無いことはしないと思うけどな。

お母さんはお茶を最後まで飲み終えると、口紅が付いたところをさりげなく拭いて立ち上がった。


「まあ、まだ三十だものね。いいわ。彼女さんがいるなら私はお邪魔ね。帰ろうかしら」

「いえ。もうすぐ帰ってくると思うのでせっかくですから一緒に夕飯でも。……あ、たいしたものはないんですけど」


料理の材料はふたり分しかない。まあでも、私が我慢すればいいだけだし。
引き留めた私を、お母さんは意外そうな顔で見た。


「私がいたら邪魔じゃないの? あなたは城治とはどういう付き合いをしているの?」


その問いには私が固まってしまう。
どういう……って、“付き合ってる”に種類なんてある?
男と女として付き合ってますよ以外の何を言えばいいの私。


「えっと」

「ただの“彼女”なだけなら、私は邪魔なはずよね。私に気を使うのは、結婚するつもりがあるから? だとしたらあなた、お仕事はやめるつもりある?」

「あ、あの」


うわあ、いきなり切り込んできたな。
ぽやっとしているけど、この人目は笑っていないかもしれない。

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