強引同期に愛されまして。
たじろいだけれど気圧されなかったのは、前に田中くんから仕事を辞めなくてもいいと言われたからかもしれない。
「結婚する気は……あります。ただ、私は仕事はやめるつもりありません」
お母さんは上目遣いに私を見る。
「そうなの? どうして?」
どうして。
今時そんなことを聞かれるとは思わなかった。だったらあなたの息子は、結婚したら仕事辞めるんですか。男女同権ってそういうことでしょ?
「仕事が好きだからです。経済的にも、ふたりで働いたほうがいいに決まっていますし。家庭のこともふたりでやっていくのがいいと私は思っています」
「城治もそう言ってるの?」
「私が仕事することには賛成してくれています」
お母さんから、ホワンとした笑みが消えた。
「……そう。思ったよりちゃんとお付き合いしているのね。だとしたらこちらも、取引のあるところにご挨拶もなく結婚とかされたら困るのよ。その気があるならちゃんと家に挨拶にいらっしゃいな。城治にもそう伝えておいてくれる?」
「は、はい」
「それとひとつだけ。私は専業主婦も仕事の一つだと考えているわ。まして夫が経営を担っていれば顧客への気配りは妻の仕事よ。あなたが思っているより重責だわ」
彼女の横顔から思い出すのは、エントランスの花。
あれだって気配りだ。このマンションに暮らす人間が居心地がいいと感じるのは、こういった見えないところでの気遣いがあってこそだろう。
もしかしたら、私はお母さんのプライドを傷つけちゃったのかな。
焦って頭に血が上って来る。