強引同期に愛されまして。
パニックになる前に、咄嗟に息を吸い込んだ。
これでも社会人になって八年。修羅場だって何度も潜り抜けてきたきたのよ。
ここで言い負けてどうする。
「……軽んじてるつもりはありません。でも私は仕事が好きです。彼の取って来た仕事を、私の力で形にするのがとても楽しいんです。だから、主婦の仕事も協力していきたいです。専業主婦であるということは、要は夫が外の仕事、妻が家の仕事というように分業しているということですよね。私たちは、外での仕事も家庭の仕事も、分かち合っていきたいって思っています」
脳をフル回転させて、何とか言いたいことをまとめる。
反論してくると思っていなかったのか、お母さんは驚いたように私を見ていたけれど、やがて口もとを緩ませた。
「ふふ。なかなかしっかりしたお嬢さんね。……城治によろしくね」
「は、はい」
お見送りをしながら、これでよかったのか考える。
お母さん、顔は笑っていたけどなんとなく空気は悪かったよね。実は怒ってたりするのかなぁ。
でも、こういうのって最初に折れたら負けな気がするもんな。うん。これでいいことにしよう。
気が抜けてしまって、そのまま床に座り込んでいたら、しばらくして、田中くんがなぜか息を荒げて帰って来た。
「葉菜」
「あ、お帰り」
彼の顔を見たとたん、思い出した。
「……って、ああ! ご飯作るの忘れた!」
お母さんで頭がいっぱいになってたよ。
キッチンには、刻まれた野菜がまな板の上に乗ったままだ。