強引同期に愛されまして。
田中くんは「それはどうでもいい」といい、座り込んだままの私の肩を掴んで顔をまじまじと覗き込んでくる。
「……誰か来ただろ」
「なんでわかるの?」
「エントランスの花が変わってた。おふくろが来たんだろ。鉢合わせた? 何か言われたか?」
「部屋にきて。……少し話して帰っていった」
そう。それで私、びっくりしちゃったんだよ。
顔を覗き込んでくる彼のスーツの襟を握りしめた。思ったより私は動揺しているらしい。小さく震えているのが自分でもわかった。
「葉菜?」
田中くんも珍しく敏感にそれを感じ取っている。
というか、お母さんと仲悪いのかな、なんかちょっと警戒しているような感じ?
「あの、あのね?」
「うん」
田中くんの手が私の腕を支えるように押さえた。お陰でなんとなく安心できて、のどに詰まっていた言葉がようやく飛び出してきた。
「仕事……やめるの?」
「……は?」
彼は予想と違うことを言われたのか、目を点にして私を見返した。
「だ、だって。お母さんが言ってたんだもん。城治はいつ仕事を辞める気なのって? ねぇ、やめるの? 実家の跡を継ぐの?」
「……そりゃ、いつかはな?」
返って来た言葉は、私にとっては予想外だった。
だって田中くんが仕事辞めるなんて思ってなかった。急に、お母さんに優位に立たれたような気分になって、心細くなってくる。