鎖骨を噛む
「Kは、この裏社会を牛耳ってるボスですよ。前にもそう話したじゃないですか。」
「ああ、そうだったな。」金子の欠伸が移ったのか、欠伸が出た。
「そういえばお前、過去に同級生を2人殺したんだってな。一人は自殺に見せかけて、もう一人は事故に見せかけて。」
「ええ、仕事ですから。」
「それから、同級生に、若い看護婦を殺すように仕向けたこともあるんだってな。」
「ええ、仕事ですから。」
「お前さあ、同級生に人殺しさせるのってどんな気持ちだったわけ?」
「成り行きでそうなっただけです。本来は、僕がKから、三股をしている若い看護婦を殺すように依頼されていたんです。でも、ちょうどその時期に同級生が自殺未遂をしましてね。で、運ばれた先が若い看護婦の勤務する病院だったんです。」
「それが若い看護婦を殺した同級生か?」
「ええ、そうです。その同級生が若い看護婦のところに居候をし始めたって情報を知りましてね。それで、僕が殺すよりもその同級生に殺させた方が成功率が高いと思ったんです。まあ、恋人のフリをしたりと、いろいろ大変でしたがね。僕の目に狂いはなかった。同級生は見事その若い看護婦を殺してくれて、その連絡を本人から受けた僕が、警察に通報したんです。まあ結果的に、それが原因で殺しからは足を洗いましたけど。」
恋人のフリ……かあ。
「……お前は、恋人のフリするのってどんな気持ちだった?」
「『お前は』ってことは、ムルソーさん、あなたも恋人のフリをして?」
「それはいいから、質問に答えろよ。」
金子はニヤッと笑みを浮かべた。