毒舌王子に囚われました
わたしの今かけている、細くて赤いフレームの、眼鏡の話ですか?
「指紋……くらい、つきません?」
毎日使っているんだ。汚れずピカピカな方がおかしいよ。所詮は消耗品なんだし。
「まったく手入れしてねぇだろ」
「手入れ……? まぁ、くもってるなぁと気になれば、服の袖とかでちょちょいと……」
「はぁ!?」「えぇ!?」
……あまりにも驚かれてしまったから、わたしもつられて驚いてしまったではないか。
秋瀬さん。
なにを、そんなに驚いているのですか?
「ズボラ女」
「ず、ずぼらぁ!?」
ん?
そういえば……、
「すっごく、クリアです」視界が。
いつもより、世界が明るく見えます秋瀬さん。爽快感ハンパないです。
「なぜ……」
「磨いてやった」
「えぇっ!? そうなんですか?」
「んな汚いもの、そのまま置けるかよ。あやうく窓から投げ捨ててやろうかと思った」
投げっ……、
「変なこと考えないで下さいよ……!」
「考えさせたのは、誰だ?」
窓からって……、ん?
「ここ、マンションですよね。何階ですか?」
「25階」
「あ、危ないです。いくら軽い眼鏡でも、25階からの落下はヤバいです、事故に繋がります!」