毒舌王子に囚われました
「苦しい……です」
息苦しいのも、そうなのですが。
心臓が……爆発しそうで、ヤバいです。
「だったら、離して欲しい?」
耳元で囁かれる。甘い声で……。
誰ですかあなた。ほんとに、秋瀬さんですか?
「そりゃあ……」
……あれ?
なんか今、秋瀬さんから離れることを考えたら、それは嫌だなって思った。
返事が途中で途切れてしまうのが、その証拠。
「そりゃあ、なに?」
「……っ、と、とにかく苦しいんです」
「返事になってないけど?」
「……!」
それから、どのくらいわたしは、秋瀬さんの腕の中にいたのだろう。
30秒……1分……いや、3分?
「溶けそう、なんですけど……」
熱い。身体が熱いです、秋瀬さん。
お風呂あがりだから熱いのは当然にしても、更にどんどん上昇していきます。
「だったら、溶けろ。今すぐ」
「そんなことできませんよっ」
たとえですよ、たとえ。
「なら平気だろ。このままでも」
どういう理屈ですか……!
「なんでこんなこと……するんですか」
「抵抗しないってことは、嫌じゃないんだろ?」
図星だった。
わたしは秋瀬さんにギュッとされて、嫌な気持ちになどなっていない。
むしろ……、嬉しいと思っている。