毒舌王子に囚われました
そう口にした瞬間、胸がズキンと痛んだ。
なに……、この痛み。
「だったらいいけど」
「…………」
痛い。すっごく、痛い。
――どうしてさっき、抱きしめてきたんですか?
それも、長い間。とても優しく。
まるで、恋人にするみたいにっ……。
そんな疑問が浮かんでくるも、なにも言えなかった。
くだらないことを聞くなと叱られるかもしれないし。
それか、『理由なんてない』『からかった』なんて言われてしまうかもしれない。
だから、わたしはそれを……聞けそうにない。
秋瀬さんの本音を確認する勇気なんて、ない。
「お前……」
「え?」
秋瀬さんが、わたしを見て、笑った。
それは、爽やかでもニッコリ笑顔でもなく。
たとえるならば……そう。
悪魔が生贄かなにかを発見したような顔で。
ゾクリと身震いしてしまう。