毒舌王子に囚われました
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「ごちそう様でした。秋瀬さん特製トースト、最高でした」
手を合わせてそういうと、
「当然だ。俺が作ったんだからな」
と満足げにそう答えた秋瀬さんは、食器を片付け始める。
そんな秋瀬さんを、慌てて追いかける。
「お前は、なにもしなくていい」
「や、でも……」
蛇口をひねり、スポンジに洗剤をふくませる秋瀬さん。
「食べ終わってすぐに洗うんですね。わたしは、結構ためちゃうタイプです」
「だろうな」
だろうなって……、
「面倒とかじゃないですよ? つけ置きして1度に洗った方が水道代の節約になるみたいなことを母から聞いたからです」
「つけ置き? こんな汚れたものを何時間も放置しておくのか?」
「そうです。その前に洗い物したときの水とか、お米のとぎ汁とか捨てずにためておいて、そこにつけるんです」
「考えられんな」
「そう……ですか? あ、作ってもらったんですから、私が片付けますよ!」
「俺がやる」
「それは……申し訳ないです」
「俺に迷惑かけたくねーなら、大人しくコーヒーでも飲んでろ」
「え……」
「この辺りを荒らされたくないんだよ」
……はい?
「だいたいお前に任せても二度手間になる。なら最初から俺がやる方が効率が良いし水や洗剤も無駄にならない」
「どういう意味ですかっ」
「ズボラ女だから」
「……!!」
失礼な。わたしだって、食器くらい洗えますよ。
だいたい、荒らすってなんですか。わたしはゴジラかなにかですか。
それとも、がっちゃんですか。お皿食べちゃうんですか。
「まぁ、ここではお客なんだし。ゆっくりしてろ」
「え……」
「溜まってんだろ、1週間分の疲れ」
秋瀬さん……。
「お前の疲れなんて、しれてるだろうが」
失礼な……!!
たしかに秋瀬さんとわたしじゃ、抱えている仕事量も責任も、比べものにならないのだろう。
でも、けっして数字と睨めっこするデスクワークも楽ではないです。