毒舌王子に囚われました
下着、どこに干してあるんだろう?
この際、生乾きでもなんでもいいや。
それから、着てきたスーツ。もし上下一式捨てられてしまったのなら、新しい仕事着買わなきゃいけない。
「このあと予定入ってるとか?」
「え?……いえ、そんなことないですけど」
「なら帰る理由なんてないよな」
は?
「もっとも――」
「……っ!?」
秋瀬さんの大きな手が顔に近づいてきたと思ったら、ほっぺたを潰された。
両頬を挟まれ、むぎゅっと。
痛くはないが、これ、変な顔になっている気しかしないのですが。
いや……、やっぱりちょっと、痛いです。
「予定なんて、あったところで全部キャンセルすればいい」
「ふぇ……?」
「俺のためにな」
「ひゃ、な、して……」
うまく話せない。秋瀬さんのせいだ。
どうしてわたしが、秋瀬さんのために予定をキャンセルしなきゃならないんですか。