毒舌王子に囚われました


そんなことないです。

例えばですねぇ、秋瀬さん。

レンタルショップに行って、怖い映画なんかを借りてきて一緒に見るなんてどうでしょうか。

基本的に映画はじっくり1人で見たい派なのだけれど、ホラーとなれば別の話。

1人じゃ見る勇気がない。かといって、好奇心がそそられる。

だから、秋瀬さんがいてくれれば、心強いというものです。

ひょっとしたら、案外怖がる秋瀬さんが見られたりなんかして……そこで秋瀬さんの意外な弱みをわたしが握る。

うん。それ、いいかも!!


「アホ面」

「へっ……」

「ニヤケてんじゃねぇよ、気色悪いな」

気色悪い……ですと!?

「秋瀬さんて、ほんっと、口悪いですね」

「素直だと言ってもらいたい」

「にしても、言い方ってものがあるでしょ?」

別に思ってもないことを言って褒めて欲しいわけじゃないけれど、オブラートに包んだものの言い方とかできないかな。

「どうして俺がお前に気を使わなきゃならないんだよ」

「まったく気を使わない意味もわかりませんがっ!」

「……!」


ん?

秋瀬さんの勢いにストップがかかったように、反論されなくなる。

沈黙は、なによりも怖い。まだ、

『うるさい』『バカか』と返される方が秋瀬さんらしい。もちろんその場合、腹は立つが。


「……たしかに」

みっ……、

認めたぁ!?

「で、ですよね。そう思うなら少しはわたしに優しく……」

「違う、そこじゃない」

「え……?」

「どうして俺、お前にこんなに思ったこと言えるんだろうな」

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