毒舌王子に囚われました


いやいや、秋瀬さん。

そんなこと聞かれましても……、わかりませんから。


「お前になら触れられるし」

「……触れられる?」

まるで、他人に触れられないような言い草。


「触れたくないんだ」

「なににですか……?」

「いろんなもの。自分の家にあるもの以外、概ね全部」

全部……!?

「それじゃ、生活できないじゃないですか」

「そう。だから、触れるさ。やむを得ず」

「それじゃあ、たとえば階段の手すりとか、電車のつり革は……」

「あんなもの触れるか」

「な、なにいってるんですか!? 危ないですよ、安全のためにあるものを避けちゃ」

「心配しなくても俺は無事だ」

「なにを、健康のこと娘に気遣われて『わしは元気じゃ』って頑なに主張して健康診断に行かない、ガンコオヤジみたいなこと言ってるんですか……!!」

「……お前のたとえ、わかりにくいな。つーか、長い」

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