毒舌王子に囚われました
どうして、秋瀬さんはわたしにだったら触れられるのかな。
触れるなんてもんじゃない。ひっついてきた……よね。
っていうか、今だってすぐ隣にいるし。
本人も不思議がっているあたり、特別理由なんてないのだろうか。
「それで?」
くいっと髪を引っ張られる。
「痛っ……」「やりたいことってなに?」
「それは……」
は、離してよ!!
「こんな明るい時間から、抱いてとかいうなよ?」
「言いませんっ……!!」
明るかろうが暗かろうが、そんなこと、頼む気はさらさらありません。
もっとも、わたしのことだけを、愛してくれるというなら別ですが……。
いや、なにを考えているんだわたし。ありえないだろう、そんなこと。
ペットとしてしか見られていないのに。
「いちいちムキになるなよ」
からかわれながらも……、ちょっと前の話題を覚えてくれていることは、素直に嬉しい。
「映画、見たいです」
「映画って……またベタな」
ん? ベタなの?……わからない。
休みの日に男性と部屋で過ごすのが初めてなわたしには、それがベタなのかどうか、判断がつかない。
「ラブストーリーが見たいとかいうんだろ?」
秋瀬さんがため息をつく。
「違いますよ! わたしが見たいのは、ホラーです」