毒舌王子に囚われました
ラブストーリーも悪くないですが、秋瀬さんと見るのは違うといいますか。
「ホラー? なんでまた」と小首をかしげる色男。
そろそろ見慣れたいものだが、全然見慣れない。どうして頭を傾けるだけで輝くの?
「1人だと、見終わったあとしばらく恐怖にとらわれそうじゃないですか」
「なら、見なければいい」
そういうだろうと思いました。あなたという人が、ちょっとだけ、わかってきました。
「それとも、きゃーって俺にしがみつきたいの?」
またそんなこと言って……。
「逆にしがみつきたくなっても、腕、貸してあげませんからっ」
「生憎、俺には怖いものはない」
「ばい菌は?」
「……怖くはない。憎いが」
「なるほど。宿敵ですね」
「そんなとこだ」
秋瀬さんとのやりとりがおかしくなって、つい笑ってしまった。
ばい菌が宿敵って、どこぞのパンの頭をしたヒーローみたいだ。
「……変なやつ」
秋瀬さんに、言われたくないですよ。
「で。見たい作品は決まってんの?」
「……え、見る気になったんですか?」
「とりあえず聞いてやってるだけ」
なんだ。ノリ気なのかと思った。
「特に決まってないです。気になってるやつがあるにはあるんですけど、思い出せなくて」
お店に行ってタイトルを眺めれば、前に見かけていつか見てみたいと思ったやつを思い出せるかもしれない。
「なら、俺が選んでやるよ」