毒舌王子に囚われました


それって……、わたしの身体触っても、見ても、なにも感じないってことですか?

秋瀬さんほどの人なら、これまで、レベルの高い女性を相手にしてきたのだろうな。

中身がこんなに毒舌で潔癖なんて知られなければ、世の女性が秋瀬さんを拒絶する理由はどこにも見当たらないし……。

平凡なわたしが女の子としてみてもらえないのは、まぁ、当たり前か。


こうなったら――、

「反撃です」

「は?」

わたしは、秋瀬さんのTシャツの中に、するりと手を入れる。

もちろん、キレられるのを覚悟で。

だって、やられっぱなしは、悔しいもん。


「かたいですね……鍛えてるんですかっ?」

「それなりに」
意外にも、無抵抗な秋瀬さん。

くすぐったくないのかな……?

わたしのお腹と全然違う、割れた腹筋。

それに、胸板。広っ……!!

やばい。自分から触ったくせに、秋瀬さんの身体にドキドキしすぎてやばいです。


「満足か?」

「へっ……?」

「下手くそ。そんなんで、男をその気にさせられるとでも?」

その気にさせる気なんて、微塵もありません。

「……どうせ、経験不足ですよ」

不足というか、皆無ですよ。

「なんなら、下も触ってみる?」

「……!? そ、そんなとこ、触りません!!」

「そんなとこって、どこだ?」
鼻で笑う。

「……と、とにかく。これで、おあいこです!」

「なんだそれ」

改めて今の状況を客観的にみると、変だ。

会社の先輩の家で。それも、ベッドの上で。

身体をくすぐりあいっこ。それも、服の中に、手を入れて。

……バカなのわたし!?

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