毒舌王子に囚われました


あぁ、このままわたしは、初めてをこの男性に捧げてしまうのだと――思った矢先。

「なに覚悟きめてんだよ」

「……??」

ギュッと閉じていた目をゆっくり開くと、真顔でわたしを見つめている秋瀬さん。

「なんなのお前」

「……へ?」

「生きてんの?」

頬を指で、つっついてくる。

そりゃ、生きてますけど。

息、してますけど……!?


「なにするんですかっ」

「気持ちいいくらい、俺の期待を裏切らないヤツだな」

「……期待、ですか?」

わたし、秋瀬さんに期待されていたんですか?

どのあたりが応えられているのかも、よくわからない。

「どこかにスイッチでもあるんじゃねーの」

意味がわかりませんが!?

「うるさいときは切っててやるよ、電源」

「そんなもの、ありません! 1度切れたらもう動きません」

「こりゃいい。返品せずに済みそうだ」

返品って、誰にですか。


「飯、作ってくる。いや、餌か?」

「……っ、」


ねぇ、秋瀬さん。

どうしてそんなに嬉しそうに笑うんですか?

なんだか、その姿。

まるで、新しいオモチャを見つけてはしゃぐ子供みたいで……

すっごく、可愛いじゃないですか。

< 50 / 128 >

この作品をシェア

pagetop