毒舌王子に囚われました


 *


秋瀬さんの作ってくれたお昼ごはんは、ハーブチキンだった。

ミニトマトやレモン、ハーブと一緒にプレートに盛り付けられたそれは、お店で出てくるような出来栄えで。

思わず、
「どこかで習ったんですか?」とそんな疑問を抱かざるを得ない。

「自己流」

「へぇ……すごいっ」

さらっと本格的なものが作れちゃうなんて。

料理本とにらめっこしながら時間をかけてやっと完成するわたしとは違う。

こんなに綺麗に盛り付けようという考えすら浮かばないし。

普段から料理しているということは、買い出しも大変だろうが……秋瀬さんがカゴに人参やトマト、お肉のパックを入れるところは、なんとも想像しがたい。

秋瀬さんにこんな一面があるのだと知ることができたのは、なんだか嬉しい。

パクッと口に運ぶ。

「おいひい……」

「食いながら話すな」

す、すみません。

でも……本当に美味しいんだもん。


食事が終わるとさっそく洗い物を始める秋瀬さんに「やらせて下さい」と一応お願いしてみるも、やっぱり邪魔者扱いされてしまった。


歯磨きをしてリビングのソファにかけ、ふと思う。


なんか、今の状況って……

〝おうちデート〟みたいじゃない?


ご飯食べて、映画見て、ご飯食べて。

……キスだってした。

思い出しただけで、照れくさい。

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