毒舌王子に囚われました


どうして当たり前のように秋瀬さんの家にいるんだろう。

こういうのって、彼女の特権じゃないの?

秋瀬さんは彼女を作る気、ないのかな。

秋瀬さんは、わたしとの関係を他人に聞かれたら、なんと答えるのだろう。

ただの後輩?

それとも……まさか、
『ペットです』とはいわないよね?


「なに眉間にシワ寄せてんの」

「……!」

背後から、秋瀬さん登場。わたしの顔を覗き込んでくる。

正面から現れて下さい。ビックリしたじゃないですか。


「洗い物、ありがとうございます」

「なにする?」隣に座って足を組む。

……一緒に、遊んでくれるんですか?

時間はたっぷりある。なにせ、今日1日秋瀬さんのそばにいることになるのだから。

「もう1本なんか見るか」

「……は、はい。次は怖くないのにしましょう。ほのぼの系で」

「そういわれると、とびきり悲惨なやつ見せたくなるな」

「ヒサンっ!?」

「頭がぶっ飛ぶやつみようか」

……そうだ、この人は、そういう人だった。

「なににしようかな」とニタニタしてタブレットを操作する秋瀬さん。

やめてぇえ。

お願いだから、次は、平和なの見ましょう。

「動物がでてくるような、可愛いの見ましょう」

「そういえば、こんな話があったな。事故で亡くなった男が犬に生まれ変わって、妻と子の家で飼われるやつ」

「フルークですか?」

「そう、それ。見たことあんの?」

「すごい好きです。父にすすめられて見て、号泣しました」

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