毒舌王子に囚われました


こんな時間に、誰だろう。

自宅電話だから、プライベートな用件だろうか。

ここは、わたしの家……なんていわれたが、さすがに電話に出るのはマズい気がする。

待てよ。

秋瀬さんって可能性もあるよね。

わたしに、かけてきてくれたのかな?


数コール鳴り響いたあと、『ただいま、留守にしています……』と留守電に切り替わる。

ピーッという発信音のあと声が聞こえてきたので、固定電話から聞こえる声に耳をすませた。


『一縷、今どこ? ねぇ、今夜泊めてくれない? メッセージ聞いたら連絡してよね。ケータイの電源、切れてんの?』


……女の人?

ちょっと酔っていそうな雰囲気がある。どこかで飲んでいるのかな。

にしても秋瀬さんのこと名前呼びだし、泊めてって……親しすぎやしませんか。

誰だろう……とモヤモヤしながら、あることを思い出す。


「秋瀬さんが、わたし以外に、触れられる人……」

前にいっていたよね。そんな人がいるって。

……女の人だったんだ。

それも、こんな時間に連絡してくるような。

今でも仲いいんだ。

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