毒舌王子に囚われました


電源は、接待中だから切られているのかな。

だとしたら……電源を入れてケータイにこの女性からのメールや伝言が残されてるのに気づいたら、秋瀬さんはどうするのだろう。

それとも、メッセージは、この伝言だけ?

だったら、これを消しちゃえば、なかったことにできる?

……って。それはダメでしょうわたし。

最低なことを、考えてしまった。

でも……。

秋瀬さんと仲の良い女の人を、近づけたくない。

2人で会ったりするのかなって考えると、辛い。


「なにしてる」


――え?


振り返ると、秋瀬さんが、いた。


「……あ、秋瀬さん!? どうして?」

「バカか。主の顔を忘れたのか?」

「や、そうじゃなくて……お仕事中かと……」

「まだ起きてたのか」

もしかして、寝ていると思って、そっと帰ってきてくれたのかな。


「あ……今、女性から、留守電が」

それを消してやろうなんて、やましいこと考えたなんて、口が裂けても言えません。絶対に。

「女? 女にうちの番号教えた記憶ないが」

だったら、さっきのはなんですか。

……お酒のにおい、すごい。

でも、話してる感じはいつも通りで酔っぱらいっぽくない。

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