毒舌王子に囚われました
「あまり、夜は連絡とらないようにしてる。明日また電話でも入れておくよ」
「……どうして夜は連絡とらないんですか?」
「身体を狙われてるから」
……はい?
それは、つまり、『私を抱いて』若しくは『抱かせて』的な、猛烈アプローチを受けているのですか?
「阻止……してるんですか?」
餌食にならないように。
秋瀬さんが誰かに襲いかかるところは安易に想像できても、逆に人に襲いかかられるところなんて、まったく想像つきませんが。
「当たり前だ」
よかった。
よかった……!
「その子を抱くつもりは、ないんですね?」
「生憎、ヤロー相手に欲情する趣味はないからな」
「ヤロー……?」
「稚沙都は、あれが女だと思ったのか?」
だって、話し方が……女の人みたいで。
でも、思い返すと、ちょっとハスキーボイスみたいだったような。
ん?
「男の人、ですか……?」
「そうだ」
「なのに、身体を狙われてるんですか!?」
「昔からベタベタ触ってくるやつだと思っていたが、ホンモノだったとは。最近になって、そっちの誘いが増えて厄介極まりない」
そうだったんだ。男の人、だったんだ……。
それがわかっただけで、心の奥につかえていたものが、嘘みたいにすっと消えていくのがわかった。
「でも、付き合いは今でもあるんですね」
「いいやつなんだ。切る理由なんてないよ」