毒舌王子に囚われました
「変わらないです。変わるなんて、思いたくないです。わたしは、秋瀬さんと幸せになりたいんです。わたしといて、秋瀬さんに、幸せになってもらいたいんで……」
話の途中で、口をふさがれる。
「……酒臭い?」
「全然大丈夫です」
そういって、今度はわたしから秋瀬さんにキスをした。
自分からするのは、初めてだ。
「お前、可愛すぎなんだよ」
「ひゃっ……」
わたしに覆いかぶさる、秋瀬さん。
「……こんな気持ちになったのは、初めてだ」
「ペットにしたい女の子を見つけたのは……ですか?」
「愛しいよ」
「え……」
「壊したいくらい」
いやいや、秋瀬さん。そのたとえ、おかしいです。
愛しいもの壊してどうするんですか。
「わたしは、秋瀬さんの、ただのペット……なんですよね?」
「まさか」
「えっ……だって、佐久間くんに、いっていたじゃないですか!」
会社の廊下で、ハッキリと。
それを聞いて、わたしは、どれだけ苦しい気持ちになったか……。
「あれは、お前が近くにいるのがわかったから」
「……はい?」
「敢えて、ああいった」
秋瀬さん秋瀬さん。
あなたの目は、どこまで見えているんですか?
わたし、曲がり角の手前にいましたよね?
「どうしてわたしが近くにいるって……」
「オッサンがお前のこと、呼んだろ。土生って」
あっ……!
「それで、ちょっと意地悪してやろうかと」
「い、意地悪すぎます。やりすぎです。わたし、すごくショックだったんですから!」