青野君の犬になりたい
午後7時を過ぎて、青野君から「今日、ご飯食べない?」というメールが来たのは気づいていたけど、返事をせずにそのまま放っておいた。
そして8時前には仕事が片付き、私はわざと青野君は無視して栗饅頭を机の上に置いたままオフィスを出た。
外に出ると、湿った風が体をなでる。
天気予報で盛んに台風が接近していると言っていた。
どこかから漂う金木犀の甘い香りを吸い込みながら、風に乱れる髪を押さえて少しの間そのままでいる。
それから、何かを期待している自分に嫌気がさして歩き出す。
けれど、やっぱりゆっくりと。
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