青野君の犬になりたい
「ねえ、疲れない?」
「なにが?」
「複数の人と付き合うこと。物理的にも精神的にも」
「疲れないよ。だって好きなときに好きな人と会ってるんだもん。今みたいにね」
青野君の『好き』は、私が思う『好き』よりずっと軽い。
好きと言われて私はこんなにもドキっとするのに。
「誰かに夢中になったことはないの? 誰かを思って胸が苦しくなるようなことなかったわけ?」
青野君は腕を組み、真剣な顔で考え始めた。
そんなに考えるくらい覚えがないということは、つまりそうした経験は「ない」ということだろう。
それでも青野君が過去に記憶を辿っているのを眺めて待っていた。
すると「姫子には会うたび、いや、姿を見るだけで愛おしい。彼女を見てるとたまに涙がにじむほど幸せな気分になる」と、その姫子さんを思い浮かべているのか、優しい笑みを浮かべた。
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