冷徹ドクター 秘密の独占愛


「学会の資料作りをする」


帰ってやることがあると言っていた律己先生は、そう告げるとすぐにリビング手前の自室にこもってしまった。

声を掛けなくていいから、好きに使っていいと言われ、とりあえず広いリビングで過ごさせてもらっている。

眠るなら奥の寝室を使っていいと言われたけど、それはさすがに申し訳ないし居たたまれないしで、全力で遠慮しておいた。

自宅にお邪魔しているだけでも申し訳なさすぎなのに、寝室という一番のプライベートゾーンに踏み込むなんてとんでもない。


大きな窓にひかれたグレーのカーテンを開けてみると、高層階から望める素晴らしい夜景が眼前に広がった。

これだけ高いと、普段なら見上げる空が正面を見ていても眺められ、近くにあるような錯覚を起こしてしまう。

しばらく飽きずに散らばる宝石のような煌めきを見つめていたけど、ふと、さっきの出来事が鮮明に蘇ってきた。

そして、単純にこれからどうしようとぼんやり考えてしまった。

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