冷徹ドクター 秘密の独占愛


九時から始まる診療の前に、一緒に働く面々に私を紹介してもらえるらしい。


昨日聞いた話だと、スタッフは助手が常勤三人、衛生士がパート一人ということ。

例の急に辞めることになった常勤の衛生士さんは、昨日付でここを去ったらしい。
本当にずいぶんと急だ。


「ちょっといいかしら、今日からうちで働いてくれることになった衛生士さん紹介するから」


診療室に入り、奥さんが朝の準備をするスタッフに声を掛ける。

受付や消毒室から四人のスタッフが集まってきた。


「常勤で働いてくれることになった、衛生士の浅木さんです」


奥さんの紹介を受けて「浅木です。よろしくお願いします」と頭を下げる。


挨拶をしながら、集まったスタッフの様子を密かに窺っていた。


もしかしたら、この医院には女子間のトラブルがあるのかもしれない。
そんな懸念も抱いていた。

歯科医院は女の職場。

学生時代の同期の友達が、職場の人間関係に悩んで退職した、なんて話はよく聞くネタ。

女が集まると、どうしても陰湿な空気が漂いがちになる。

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