冷徹ドクター 秘密の独占愛


今日は、週一回の律己先生が診療室を外す日。

ここから近くにある日歯系列の大学病院に出向いて診療協力をしている。

一般開業医では対応できない口腔外科のオペなどに入っている。


「あららら、院長に面倒押し付けられちゃったんだ?」


その場で突っ立っていると、届いた技工物をチェックしに来た鮎川先生に声を掛けられた。


「院長、自分が行ったら律己先生にどやされると思って浅木ちゃんに頼んだんだろーね」

「えっ、じゃあ私が院長の代わりに怒られるじゃないですか!」


とは表向き言ってみたけど、律己先生に怒られる気はしない。

少し前だったら、この状況にかなり怯えたはずだけど……。


「それは大丈夫じゃん? 不機嫌かもしれないけどね」


透明のビニール袋に入った濡れティッシュに包まれた義歯を取り出し、鮎川先生は確認したがらそんなことを言う。


「昨日、明日は朝一からオペに入るとか言ってたから、今から行けばちょうど手空いてるかもね」


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