冷徹ドクター 秘密の独占愛
「浅木……うちの医院には、お前が必要だ」
「え……」
「お前がいなくなって、『あの子はどうした』と、何人の患者が聞いてきたと思ってんだ」
濡れた頬を指で拭い、律己先生は真剣だった表情をふっと緩める。
「お前に診てもらいたいと思って来院する患者はどうする?」
担当になってほしいと指名してくれた患者さん。
指導から他愛ない話でいつも盛り上がってしまう患者さん。
「先生には言いづらくて」と、こっそり気持ちを相談してきてくれた患者さん。
東條歯科医院で出会った患者さんの顔が次々に浮かんでくる。
「それに……俺にだってお前が必要だ」
両手でそっと頬を包み込まれ、鼓動が加速していく。
間近にある私の顔をじっと見つめ、律己先生は今日初めて見せる優しい笑みを浮かべた。
「俺が引退するその時まで……アシストしてくれないか?」