冷徹ドクター 秘密の独占愛
「憂鬱なんだよな、あの人がいる日」
「やめてくださいよ、ますます不安になる」
負のオーラを出しまくる鮎川先生を見ていると、こっちまで不安を煽られる。
「ハァ」とため息をつくと、牧先生がハハハッと豪快に笑った。
「あんまり気負いしないで、普通にやってれば大丈夫だよ」
「そうですかね……」
普通、か……。
果たして、私の普通で通用するのかな。
そもそもの基準値が違ってる予感しかしないのだけど。
「律己先生は確かに厳しいけど、全ては患者さんのためだからね。その分スタッフに厳しいのは、仕方ない部分もあるよ」
「それは、確かに……」
「浅木ちゃん、入って早々辞めるとか言うなよー?」
「えっ! だから、やめてくださいよ、そういう不吉なこと言うの――」
ガチャンと扉の開く音がして、続けて「おはようございます」という声が聞こえてくる。
ハッとして振り返ると、奥からネイビーのスクラブ白衣が近付いてくるのが目に映った。