冷徹ドクター 秘密の独占愛
「おっ、おはようございます」
「おはようございます」と背後にいる先生たちの声を受け、つられるように挨拶をする。
マスクを顎にかけたその顔を見て、思わず「あっ!」と声が出そうになってしまった。
この人、この人……
塚田先生のお通夜に来てた、あの……!
あんな日だったけど、印象的でしっかり記憶の中に残っていた。
あのとき篠田さんが、院長あんなイケメンの知り合いいたの?なんて言ってたけど、まさかここの息子……副院長だったなんて。
閉まったドアが再び開き、後から院長が入ってくる。
「律己先生、ちょっと」
私たちの前を颯爽と通過していった副院長を呼び止め、続けて「浅木さん」と私を手招きで呼び寄せる。
振り向いた無表情な顔は院長を一瞥すると、横に並んだ私へと向けられた。
どこか威圧感を感じさせる目に、ピリッと全身に緊張が走る。
「うちで働いてくれることになった、衛生士の浅木さん。塚田先生のところで働いていたけど、うちに来てくれたから」
「あ、浅木です。よろしくお願いします」
副院長は品定めでもするような目でじっと私の顔を見ると、胸元のネームプレートに視線を落とす。
再び私の顔に視線を上げると「よろしく」と抑揚のない声で一言そう言った。