冷徹ドクター 秘密の独占愛


「そうなんですよ。いつもですよ、こういう席で飲んでるの、見たことないです」

「えっ、そうなの? 飲めないのかな」

「いやぁ、よくわかんないんですけど、聞いた話だと、次の日の仕事に支障が出ないようにらしいです」

「うわっ……さすがバリバリ系」


そう言うと、中田さんは「出た、バリバリ系!」と言ってクスクスと笑う。

そしてグレープフルーツ絞りを再開させた。


初日に制裁を受けてから、私はすっかり副院長が苦手になってしまった。

今まで仕事をしてきて、あんな風に直球でお叱りを受けたことなんて経験がない。

きっと自分の仕事に自信を持っている人だったら、あんな風な言い方をされたら耐えられないと思う。


でも幸か不幸か、私にはその覚悟がある程度できていた。

きっとできなくて、副院長の怒りの地雷を踏むだろう、と。

まさかあんな初っ端からとは思いもしなかったけど、その予感があったおかげで翌日から出勤拒否をするまでのダメージは受けずに済んだ。


でも、なるべく近付きたくないのは間違いない。

すでに拒否反応がビンビン出てしまっている。

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