冷徹ドクター 秘密の独占愛


「律己先生、こういう飲み会とかでもずっと仕事の話してるらしいですよ」

「えっ、そうなの? お酒飲まずに仕事の話?」

「って、鮎川先生が言ってました。だからここだけの話、鮎川先生は律己先生不参加の飲みのが気が楽とかって言ってました」

「それはね……飲み会まで気が抜けないって」

「そんなわけで、律己先生のプライベートは謎ですよ。仕事の話しかしないから」

「仕事人間、ってやつかね。あ、そういえば気になってたんだけど、何でみんな副院長のことを“律己先生”って名前で呼んでるの?」


ここに入ってきた時から気になっていたこと。

先生たちもスタッフもみんな、副院長のことを名前に先生付けで呼んでいる。

他の先生はみんな苗字で呼ばれているのに、どうしてだろうと疑問に思っていた。


「ああ、私も入った時からそうだったんで特に気にしてなかったんですけど、院長が東條先生って呼ばれてるからみたいですよ? ほら、アポ帳とかカルテに捺されてる判子も、院長は苗字じゃないですか。だから、律己先生は名前みたいで、そこから呼び方もきてるみたいです」

「ふ〜ん、なるほどね……」


確かに、診療中に苗字で呼んだら紛らわしいかもしれない。

二人振り向いたりしたら、結構面倒くさそうだ。


「それにしても、浅木さんが強い人で良かったです」

「え?」

「ほら、律己先生との初日、いきなりあの態度だったから、浅木さん大丈夫かねってみんなで言ってたんですよ」

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